ドロドロ

 

 

夏になりました。

 

 

 


今年も、まず最初に大好きな映画を観ました。

 

 

自分は友達とけんかすることが滅多に、というかしない人間ですが、一度だけ大きなけんかをした事があります。中学生のときでした。

 

 

 

理由こそ覚えていないけれど、泣きながら相手の女の子の家に電話をかけて ごめんねと言ったことだけは、鮮明に覚えています。そのけんかの時、学校の授業でサマーウォーズを観ました。ずっと、何をするにも一緒だったのに、お互いに口をきかなかったから、主人公の声優をする神木隆之介が好きだったその子と内容について話すことはありませんでした。話したいことは沢山あったのに。今でも当時の話をその子とすることがあります。きっとこの先、何年、何十年経ってもこうして忘れることはないのだと思います。夏が来るたびに思い出すのだと思います。

 

 

今年は、ある人と観ました。優しい言葉や自分の知らない言葉をよく使い、よく気がついて、あたたかくて涙脆い人です。案の定ラストシーンで泣いていました。エンドロールが終わって画面が真っ暗になるまで静かに観て、「良かったね」ってちいさい声で言う、やさしい人です。

 

 


自分は自信がありません。何に対してかと聞かれても、すべてと応える以外思いつかないほどに。

 

 

どれだけの人が自分のことを好いていてくれるかを分かっていながら、それでもなお自分は必要とされていないのだと勝手に思い込んで自分を責めて、可愛くないな、生きていていいのかな、と天井を見つめます。そんな自分のことを周りの人が知ったら、好きという気持ちとともに、みんな、何処かへ行ってしまうんじゃないかと、そんな気さえします。

 

 


こんなことを考えてしまうのも、久しぶりに読んだ太宰治人間失格のせいです。きっと。

 

 

好きな作家は誰かと聞かれたら、一番に太宰と言います。自分のこころの奥底にある真っ暗な塊を少しだけ溶かしてくれるような、それでいて、また人の弱さを、黒い矢を突き刺してくる。そんな救いのない作品たちを、太宰自身も含めて自分は好きなのです。

 

 

 

 


夏になりました。

 

 

 

外では今日も目が眩むほど太陽が輝き、人は暑さでぐったりとし、店の涼しい風を浴びれば安堵した表情を浮かべます。そんな様子を、劣等感と罪悪感につつまれた自分は今日も少し高いところから見下ろしては、覚束ない足取りでまた、ひんやりとした部屋に戻ります。どうしようもないドロドロした気持ちと一緒に。